その頃、私はまだかろうじて歩ける状態が続いていました。腫瘍による腹部の圧迫や背痛がひどく、持続性のある鎮痛剤(MSコンチン)と即効性のあるパーカセットを毎日サプリのように飲んでいました。このせいで便秘がひどくなり、軟便剤や下剤を飲んでは下痢、便秘を繰り返していました。また、過度の貧血でいつも倦怠感があり、食欲もなく、体重は減りつづけていました。血中カルシウムは、ゾメタ(骨吸収抑制剤)や点滴を使ってなんとかコントロールしている状態でした。
臨床試験が始まると、処方薬の量はさらに増えました。吐き気止め4種類、下痢止め、ステロイド、抗生物質、白血球増加剤、精神安定剤、不眠剤などなど。それでも抗がん剤による嘔吐や下痢、倦怠感はひどいものでした。副作用を抑えるために飲み続ける薬がさらに新たな副作用をもたらす。悪循環の始まりでした。
初めての救急車(注:トイレネタを含みます)
1回目の抗がん剤投与のあった次の日のことです。激しい嘔吐と下痢の苦しみははるかに想像を超えるものでした。それも両方一度に「同時多発」攻撃です。トイレで散々あえぎ苦しんだ後、力尽きて床に這いつくばっていました。すると今度は腹部にさらに強烈な痛みが走ります。信じられないほどの激痛です。静脈瘤が破裂したのかと思いました。のた打ち回ってる私を見て、とうとうJJが救急車を呼んでしまいました。気づいたときは、救急隊員の人が何人も部屋の中にいて、一人はベッドの脇にある私の処方薬の山をチェックしています(オーバードーズだと思ったのでしょうか。)そして、そのまま私はタンカに乗せられ、近くの病院まで運ばれました。
結局、病院で、DILAUDIDをIV投与されると痛みはすぐに引きました。念のためにレントゲン写真を撮ってみると、医者は過度の便秘のせいだと言うのです。そんな馬鹿な、さっきあれだけ上下からゲーゲー出まくったのに。しかし、彼曰く、下痢はたまった宿便の隙間からでも押し出てくるらしいです。なるほど、でもなんか納得いきません。あの気絶しそうな痛みが単なる「便秘」のせいだったなんて。
(治療歴8へつづく)